運転資金の借入と返済原資
2013年8月24日 :税理士ブログ
運転資金の中でも、狭義の運転資金と呼ばれるものは、売上債権に棚卸資産を加えたものから、仕入債務を差し引いたものです。
では、この狭義の運転資金を借入によって調達している場合の返済原資は何に求めれば良いのでしょうか。次のようなパターンが想定されます。
①利益
・税引後の利益として社内に残った資金。
②売上の減少
・回収条件や支払条件、または売上に対する棚卸資産の比率が一定ならば、売上の減少により運転資金も減少します。
③回収条件の短縮
・早期の売上回収により得た資金。
・これは得意先にとっては支払条件の短縮になり運転資金の増加要因です。
④棚卸資産の圧縮
・棚卸資産として留まる期間が短くなるため運転資金は減少します。
⑤支払条件の延長
・支払いを先に延ばすことによって得た資金。
・借入金を仕入債務で肩代わりするとも言えます。
・仕入先にとっては回収条件の延長になり運転資金の増加要因です。
⑥増資
・増資によって払い込まれた資金。
実際にはこれらの組み合わせにより返済原資が生み出されます。これらのうち、②~⑥は常にあるものではないので、①の利益に返済原資を求めることになります。ただし、①の利益には変動があり、投資や配当にも向かうので安定した返済原資とは言えません。
このために用意されている借入の方法が、分割返済がなく、期日に書き換えを予定した手形貸付等の借入で、その特徴から「ころがし」とか「ベタ」と呼ばれます。
運転資金の借入としては、この「ころがし」や「ベタ」が理想ですが、現実の借入は分割返済付のため定期的な借り換えが必要となっているケースが多いでしょう。
ここに、定期的な借り換えを確実にしたい企業側と、定期的な借り換えを約束したくない金融機関側との立場のズレが起きることがよくあります。このズレへの対処には金融機関との日頃のコミュニケーションが欠かせません。